発見!ご当地「油」紀行
第4回 中国(上海市)トマトと卵の炒め物
上海には、黄浦江(こうほこう)を隔てて二つの趣の異なる街があります。一方は、上海テレビ塔や2008年7月に完成した上海環球金融中心などの摩天楼が建ち並ぶ浦東。もう一方は、豫園周辺の旧市街や租界時代からの町並みが残る浦西です。伝統的な街並みと未来都市のようなビルの建ち並ぶ街が、川の両側でそれぞれ発展しています。
日本では意外と知られていない上海の家庭料理
上海市中では、他の地域の中華料理や西洋風の料理が多く見られるようになりましたが、依然として上海伝統の料理にも人気があります。
生活科学研究課が上海の人に「家庭料理と聞いて思い浮かべるメニュー」を聞いたところ、「トマトと卵の炒め物」と多くの人が答えました。「餃子」や「麻婆豆腐」など、日本の食卓にもすっかり定着した中華料理ですが、家庭での定番料理には意外と知られていないメニューがあるものだと驚き、同時に興味を持ちました。そこで、今回はこの「トマトと卵の炒め物」を上海のご家庭で作ってもらうことにしました。
彩り豊かな生鮮市場は、中国のエネルギーの源
まずは、材料のトマトと卵を買いに、最近では日本のスーパーのような大型小売店も見られますが、上海市郊外の凌(リンチャオ)市場に出かけました。この市場は、近くの農家から仕入れたものが売られており、朝5時から夜8時まで開いています。
買いに来るのは、女性や年配の方がほとんどで、店員とお客さんをあわせると1000人程度の規模です。日本の市場とは違って呼び込みも少なく、意外にも静かな雰囲気の市場でした。
上海の市場では通常一斤(500g)を単位として、値引き交渉をしながら買い物をします。トマトは青果売り場で売られています。トマトの種類は赤いものが主流で、直径2~3cmのものから、10cm以上のものまで色々な大きさのものがありました。上海のトマトは中国の中では味が薄く、西に行くほど味が濃くなるそうです。
料理方法としては炒め物をしたり、スープを作ったりします。最近では生で食べることも多く、そのまま食べたり、サラダを作ったりする他に、砂糖をかけて食べることもあるようです。また、大きいものは主に炒め物やスープなどの料理に使われ、小さいものは生食でそのまま食べることが多いそうです。今回購入したトマトは、1斤で2元(※注)でした。
ちなみに、トマトが食べられ始めたのは、中国では清朝末(1900年あたり)といわれており、日本では食用作物・野菜として初めて記録に現れたのが明治24年(1897年)なので、日本と中国でほぼ同時期です。
卵は市場の卵屋で購入しました。卵を専門で売っている商店は日本ではあまり見かけないので、珍しい光景でした。卵屋には鶏の卵だけではなく、他の鳥(鴨、アヒル、すずめなど)の卵も売っています。鶏の卵は大きく分けて白い卵と茶色くて大き目の卵の2種類があります。購入した卵は、ビニール袋の中にそのまま入れて渡されるので、気をつけて持って帰らなければなりません。
卵もトマトと同様に量り売りで、1斤で4元でした。
※注 1元は、約15円(2008年9月現在)
ふわっとジューシーなトマトと卵の炒め物ちょっぴり甘いのが上海流
まず、トマトをきれいに洗ってから、表面に水気がなくなるように拭き、輪切りにしました。
卵は、塩を加えて溶きほぐし、炒め物をするよりも多めに油を入れた中華鍋で、揚げるように調理します。ここで、1度加熱調理した卵を取り出しておき、トマトを炒めてから加えるのがポイントです。
次にトマトを鍋に入れ、塩と砂糖を加え、油で炒めます。トマトに火が通ったら、先ほどの卵とトマトを一緒に1分くらい炒めてできあがりです。
トマトと卵の炒め物は中国各地で作られますが、特に上海で多く見られ、ご飯と一緒におかずとして食べるのが一般的です。なかには、西安(シーアン)が省都の陝西(センセイ)省のように麺にかけて食べる地域もあるようです。
上海の料理は全体的に甘い味付けが多く、トマトと卵の炒め物にも砂糖を入れて作るのが特色です。好みによって、ピーマンを加えたり、白酢を隠し味に加えたりすることもあるそうです。
上海の家庭では、週に二度は食卓に出るほどの人気メニュー。手軽に作れておいしいのが人気の秘密のようです。もちろん、上海のレストランでも人気のメニューですので、上海に行かれた際にはぜひ召し上がってみてください。
このトマトと卵の炒め物は、ご家庭でも簡単に作ることができます。砂糖を加え、甘めに仕上げたものをご紹介します。上海の味をぜひご家庭でお試しください。
レシピはこちらです。⇒ トマトと卵の炒め物 上海風