発見!ご当地「油」紀行
第46回
和歌山県(有田市)
ほねくり天ぷら
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和歌山で長年愛される「ほねくり天ぷら」
今回は、紀伊半島の南西部にある和歌山県を訪ねました。年間を通して温暖な気候に恵まれ、みかん、梅、熊野牛、伊勢エビなど山の幸・海の幸の宝庫です。
県北部の有田市では漁業が盛んで、水揚げ量は和歌山県内一位を誇っています。この有田市では、漁獲量が全国一位の魚を使った「ほねくり天ぷら」が地元で愛されているそうです。どのようなものなのか、現地で取材をしてきました。
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和歌山のシンボルのひとつ、和歌山城。紀州徳川家の居城として長い歴史を刻んだ。
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有田市内を悠然と流れる有田川。鮎釣りの名所としても知られる。
タチウオを贅沢に使ったすり身揚げ
ほねくり天ぷらとは、新鮮なタチウオを骨ごとすりつぶし、油で揚げたすり身揚げのことです。魚のすり身を油で揚げたものは、東日本では「さつま揚げ」、西日本では「天ぷら」などと呼び、地域差があるようです。
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タチウオを主原料とするほねくり天ぷら。あぶると香ばしさが際立つ。
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市内のスーパーなどではお馴染みの存在。
有田市が面する紀伊水道は、昔からタチウオの好漁場でした。タチウオは、主に刺身や焼魚として食べられていましたが、足が早いため、保存性を高める目的で、すり身揚げにすることも多かったようです。
「給食でも出ていたので、多くの人にとって馴染み深い食べ物だと思います」「おやつ代わりによく食べました。そのままでもいいし、おでんやうどんに入れることもあります」と地元の方。“ほねくり”とは、 “骨ごとくる(繰りまわす)”、石うすを回して骨ごとすりつぶすことから名付けられたそうです。
骨も皮もまるごと豪快にすりつぶして生まれる風味
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最初に、タチウオの頭と内臓を取り除きます。
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骨や皮も一緒にまるごとミンチにします。
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塩などを加えて練り上げていきます。温度の急上昇は風味や食感に影響するので、温度管理が大切です。
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丸く成型して、植物油で揚げます。
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140℃前後でじっくりと揚げてから、170℃前後でさっと揚げ、こんがりときつね色になれば完成。
揚げ立てをいただきました。骨も皮もまるごとすりつぶしたほねくり天ぷらは、とてもしっかりとした食感で、うま味がギュッと詰まっています。噛むほどにおいしさが口の中に広がり、揚げたての香ばしさも格別でした。
現在は有田市のみならず、周辺の和歌山市、海南市でも人気が高く、県北部海側のソウルフードとなっているようです。
(22.12.16)
- 協力
- (有)天乙商店
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