発見!ご当地「油」紀行
第44回
青森県(弘前市)
いがめんち
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リンゴは青森県の代表的な特産物。弘前市では国産リンゴの約2割が生産され、市の木にも指定されている(写真は赤く色づく前)。
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弘前市のシンボルのひとつ、岩木山。標高1625m、県内で一番高い山であり、国定公園にも指定されている。
青森県・弘前市の郷土料理「いがめんち」
青森県は本州の最北に位置しています。面積の約65%を森林が占めており、文字どおり森の県。複雑な地形・海域の影響で地域によって気候が異なり、季節の移り変わりがはっきりしているのが特徴です。リンゴやニンニクの生産量は日本一、近年では米の生産も盛んです。北は津軽海峡、東は太平洋、西は日本海に面し、三方を海に囲まれた漁業の盛んな県でもあります。
県西部にある弘前市はかつての城下町で、津軽地方の中心的な存在。この弘前市では「いがめんち」という料理が名物だそうです。どのようなものなのか、現地の方に電話やメール等でのご協力も頂きつつ取材をしてきました。
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弘前では、おかずとしても肴としてもお馴染み。「いかめんち」の表記もよく見られる。
貴重なイカを余すところなく食べ切る工夫
弘前市の市場やスーパーのお惣菜コーナーを歩けば、すぐにいがめんちを見つけることができます。「いが」とはイカのことで、「めんち」はミンチ状のことを示します。つまり、イカを細かく刻んでミンチ状にし、揚げたもののことです。「イカと野菜を刻んで、小麦粉と混ぜて揚げます。イカ以外の具材は店によって違い、形もいろいろですね」と、売り場の方。
青森県では昔からイカ漁が盛んで、沿岸部ではイカがよく食べられてきました。しかし内陸の弘前市では、かつては貴重なもの。「胴の部分は主に刺身で食べられ、残った足や耳(エンペラと呼ばれる部分)はどうするかと工夫するうち、いがめんちが生まれたのでは」と、地元の方。一説では戦後の食料難の時代に誕生したとも伝わるそうで、余すところなく食べ切ろうという思いが、いがめんち誕生につながったのですね。
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すべての材料をボウルに入れて、よく混ぜ合わせる。イカと野菜のほか、最近では山芋をすって加えてなめらかにしたり、おろしショウガを加えたりする人もいるそう。
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170~180℃に熱した油でじっくりと揚げていく。
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そのままで食べることが多いが、レモンをしぼったり、醤油やマヨネーズをつけたりする人も。
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形状も様々で、こちらは球形のもの。他に小判型、丸型もよく見られた。
イカの香ばしさと旨味が口の中いっぱいに
実際に作るところを見せてもらいました。まずイカを細かく刻み、みじん切りにした玉ネギとニンジン、小麦粉、片栗粉、卵、塩少々を加えてよく混ぜ合わせ、揚げていきます。「うちでは、イカはゲソだけを使います。玉ねぎは必須で、他はそのとき余っている野菜を入れています。キャベツを入れる人も多いですね。小麦粉と片栗粉は3:1ぐらいの割合で入れて、全体をドロッとした感じの生地に。粉を入れ過ぎたら、お酒を入れてのばすのがコツ」とのこと。片面4~5分ずつ揚げれば完成。揚げている最中から食欲を誘う、実にいい香りが漂ってきました。
実際に食べてみたところ、イカの香ばしさと旨味、野菜の甘味が口の中いっぱいに広がりました 。揚げることでイカの香ばしさが増すようです。長い間、弘前の人々に愛されてきた理由がよく分かりました。
(21.10.22)