発見!ご当地「油」紀行
第36回 鹿児島県(奄美市)油そうめん
油と出汁を使った奄美ならではの麺料理
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島北部の海岸には美しい砂浜が広がり、ウミガメの産卵地にもなっています。
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伝統工芸品の大島紬。泥や植物等で染めた黒褐色の絹糸を絣模様や縞模様に織った織物で、しなやかで軽いといった特徴があります。
鹿児島市から南西に約380km、沖縄から約340kmと、鹿児島と沖縄の中間に位置する奄美大島。奄美市は、奄美大島の中・北部にあり、大島本島を含む8つの有人島からなる奄美群島の拠点都市としての機能を持っています。黒潮の流れの中に位置する奄美大島では、古来より交通や交易の中継地として、南方と北方の人や文化が出合い、交わり、豊かで独自の文化が育まれてきました。食の世界でも同様に、沖縄と本土の食文化が融合したような独特の「島料理」の文化が各家庭に根付いています。そんな奄美の家庭料理に「油そうめん」というメニューがあると聞き、早速訪ねてみました。
離島ならではの知恵乾物をうまく活用して
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奄美では稲の収穫が終わり、一息つく旧暦の八月が一年の折目だったと言われており、八月踊りはこの時期に、各集落で行われる祭りです。<写真提供:奄美大島観光物産協会>
「油そうめん」とは、茹でたそうめんを、数種類の具材と一緒に油で炒めた後、出汁を加えた料理のこと。家庭によって作り方は異なり、茹でたそうめんを、予め油と出汁を混ぜた“たれ”にからめて作ることもあるそうです。この料理が各家庭に根付いた背景には、流通が悪く乾物に頼らなければならなかったという、離島ならではの事情がありました。各家庭に常備している野菜と、保存食であるそうめんで作った、「油そうめん」は日常の食事として、人が集まるときに作るおもてなし料理として、そして奄美の伝統的な年中行事「八月踊り」のときに振る舞われる行事食として・・・と、様々なシーンで食されています。「昔、『八月踊り』では、夜を徹して踊りながら集落中の各家庭を周っていて、その際に、踊り手が休憩時間などに食べていたのが、『油そうめん』なんですよ。」と島料理店の店主。
「油そうめん」の作り方は沖縄の「そうめんチャンプルー」にも似ていますが、違いは出汁を使うことです。「沖縄の料理は、中国の文化が色濃くて、強火で短時間で炒めるものが多いけど、奄美の料理は加熱中に火を調節したり、とろみをかけたりと『日本的』な要素が多いんですよ。」とのこと。「油そうめん」は、「そうめんチャンプルー」と本土の「にゅうめん」が合わさったような、奄美の食文化をよく表した料理とも言えるのです。
凝縮した出汁の旨みが味のポイント
島料理店の店主に「油そうめん」の作り方を見せてもらいました。「私の母が作っていたレシピにアレンジを加えて店で出しているんですよ。」とご主人。この言葉からも、「油そうめん」が家庭に根付いた料理であることが伺えます。まずは、そうめんを固めに茹でて、冷水で冷やします。
中華鍋に油をしいて豚肉に火を通し、塩こしょうをふったら、にんじん、玉ねぎを入れ、野菜から水分が出たら、じゃこ、椎茸、にら、そうめんを順に入れていきます。その後鶏スープを入れ、軽く煮たたせたら皿に盛りつけて出来上がりです。
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茹でたそうめんは冷水でしめないと、この後炒める時にのびてしまうそうです。
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具材は豚ばら肉、にら、椎茸、玉ねぎ、にんじん、じゃこ。季節によっては茎にんにくを入れる家庭も多いそうです。
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そうめんを入れたら、手早く鶏スープを入れ混ぜ合わせていきます。
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野菜や肉もたっぷり入った栄養満点の一皿です。
「うちの『油そうめん』は、鶏飯※にも使っている鶏スープを使っているのが特徴なんですよ。」とご主人。この鶏スープに、具材として加えたじゃこや野菜から出た出汁と、油が混ざり旨味が凝縮されています。また、麺1本1本にスープと油が絡んでいるため、時間が経っても麺どうしがくっつくこともなく、最後までさっぱりといただけます。
奄美の食文化を代表する「油そうめん」は、沖縄と本土のそうめん料理の“良いとこ取り”をしたような味わい深い一品でした。
※蒸した鶏肉や、錦糸卵、パパイヤの漬物等を茶碗に盛り付けたご飯の上にのせ、
鶏がらスープをかけて食べる奄美の郷土料理。
(14.8.22)
- 問合せは
- 奄美大島観光物産協会 0997-53-3240