発見!ご当地「油」紀行
第35回 長野県(松本市)山賊焼
三ガク都に根付く一枚肉を揚げた豪快な鶏料理
長野県の中央部、松本市。国宝松本城を中心とする城下町であり、市の中心部には歴史的建造物が数多く残されています。北アルプスや美ヶ原を擁する「岳都」、近代日本の幕開けと同時に新しい教育がスタートした「学都」、サイトウ・キネン・フェスティバルなどクラシック音楽が盛んな「楽都」の、「三ガク都」として訪れる人々を魅了しています。そんな松本市に、「山賊焼」と呼ばれる豪快な料理があると聞き、早速訪れてみました。
名前の由来は山賊は物を“とりあげる”から
「山賊焼」とは、松本市や塩尻市を中心とする中信地方で親しまれている、鶏の一枚肉をタレに漬け込み、片栗粉をまぶして揚げた郷土料理のこと。名前の由来は諸説あるそうですが、山賊は物を“とりあげる”から、“鶏を揚げる”料理を「山賊焼」と呼ぶようになったそうです。また、山賊の傍若無人なイメージを一枚肉を使った豪快な料理になぞらえたとも言われています。揚げ物料理なのに「焼」がついているのは、昔は油が貴重だったので、少量の油で焼いていたためで、現在一部の店舗では「山賊揚げ」とも呼ばれているそうです。
4~50年ぐらい前から、飲食店のメニューやお惣菜として市民の生活に根付いていた「山賊焼」ですが、更に盛り上げ、次の世代の人たちに伝えていくために、10年ほど前から地元の飲食店の方々が中心となり、イベントに出展したり、メディアへのアピール等の活動を行い、2011年に「松本山賊焼応援団」を結成しました。「山賊焼の良いところは、子供から大人まで、そして、外国人もみんなが食べられる料理だってところなんですよ。」と応援団の副団長の方。地元の人々の間でひっそりと愛されてきた「山賊焼」は、今では市内100以上のお店で味わうことのできる、松本きっての名物として訪れる人々をお腹いっぱいにしてくれています。
タレの味は店舗によって様々
油の鮮度も美味しさの秘訣
「松本山賊焼応援団」の副団長に作り方を見せてもらいました。まずは、鶏のもも肉を均等に火が通るように開いていきます。開くと大きさは、掌2枚分ほど。これを特製のタレに漬け込みます。タレのベースの味は、醤油、味噌、塩等店舗によって様々ですが、今回は信州味噌をベースに、醤油やにんにく、しょうが等を合せたタレに20分ほど漬け込みました。「漬け込む時間も、店によって違いますが、ウチは味噌ベースなので味が滲みこみやすく、短めなんですよ。」と副団長の方。
味が滲みこんだら、大きな一枚肉の両面にまんべんなく片栗粉をまぶします。
これを、180℃の油で5分程揚げていきます。「松本山賊焼応援団」では「松本山賊焼五ヶ条」というものを定めているのですが、その一つが「揚げる油脂は自由だが汚れた油では揚げない」こと。油のフレッシュさも「山賊焼」の美味しさを左右する重要な要素なのです。
揚げあがったら、油を切り、一口大に切ります。「松本山賊焼五ヶ条」では「キャベツやレタスなどの野菜を一緒に盛りつける」とあり、定番は、ざく切りのキャベツ。
揚げたてを一口食べれば、片栗粉のカリッカリの衣の中から、ジューシーな肉汁とニンニクやショウガの香りがふわっと口の中に広がります。そして、キャベツが口の中をさっぱりとさせてくれます。ボリューム満点な一皿ですが、「ウチでは女性の方でも一枚食べますね」というほどお酒やご飯にぴったりで、お箸が止まりません。
中信の豪快な郷土料理は、地元自慢の名物として、これからも老若男女に愛され続けるでしょう。
(14.06.24)
- 問合せは
- 松本山賊焼応援団事務局 0263-32-5345