発見!ご当地「油」紀行

第31回 三重県(津市)津ぎょうざ

発祥は学校給食
大きな大きな揚げぎょうざ

今では一部を残すのみとなった津城跡。櫓は復興され、市民の憩う「お城公園」の顔となっています。

今では一部を残すのみとなった津城跡。櫓は復興され、市民の憩う「お城公園」の顔となっています。

毎年10月の「津まつり」で披露される伝統芸能の「しゃご馬」。篭馬の中に入り、赤毛のかつらと鬼の面をつけて踊り、時には駆け回って観客を驚かす姿は津独特のものだそうです。 <写真提供:津市観光協会>

毎年10月の「津まつり」で披露される伝統芸能の「しゃご馬」。篭馬の中に入り、赤毛のかつらと鬼の面をつけて踊り、時には駆け回って観客を驚かす姿は津独特のものだそうです。 <写真提供:津市観光協会>

三重県のほぼ中央部に位置する津市。天正8年(1580年)に織田信包(信長の弟)が津城を創築後、藤堂高虎が城を整備し、城下町として発展してきました。現在は、官公庁や国の出先機関、文教施設が集中する三重県の行政・教育の中心地となっています。津市の子どもたちに昔から人気なのが、学校給食で出される大きな揚げぎょうざ。今では、市内の小中学生だけではなく、誰でも食べることができる市民自慢の逸品になっていると聞き、早速訪ねてみました。

子どもたちの誇りに
市民の思いで学校から全国区へ

「津ぎょうざ」の誕生は1985年ごろの学校給食でした。当時、栄養士の方が「子どもたちの記憶に残るメニューを作りたい」と思い、手作りぎょうざを出すことを思い付いたそうです。しかし、大量に調理をしなければならない学校給食において、ぎょうざをひとつひとつ包んでいくのは手間でもあり、大きなぎょうざを作るようになりました。そして、大きなぎょうざを焼く機械がなかったため、揚げぎょうざにして提供したところ、大人気メニューに。その後、より印象的にするためにどんどんと大きくなり、今のサイズとなったそうです。「周囲のパリパリしたお煎餅のようなところを先に食べて、具はパンにはさんで食べていました(笑)」とは、当時の学校給食を知る「津ぎょうざ協会」の方。 
そして、2008年に「市の活性化につながれば」と思い、このぎょうざを給食以外の場でも食べられるよう、ご当地グルメ化したそうです。「2年ほど前に、ご当地グルメのイベントで入賞したとき、津の子どもたちの喜ぶ笑顔が頭に浮かんだんです。市民は津のことを『何もない街』とよく言うけれど、このぎょうざが、津の子どもたちの自信や誇りになれば良いなと思ってるんですよ」とは、ご当地グルメ化を手がけた「津ぎょうざ協会」の会長さん。今では、市内各地の飲食店の他、全国の百貨店で行われる催事や、ご当地グルメのイベントでも食べることができるようになり、「津ぎょうざ」は市民の誰もが知る地域の「誇り」へと進化しているようです。

「津ぎょうざ」の取扱店は約20店。マップで各店舗の個性あふれるぎょうざを知ることができます。

「津ぎょうざ」の取扱店は約20店。マップで各店舗の個性あふれるぎょうざを知ることができます。

「津ぎょうざ」は通常のぎょうざ5~6個分に相当し、名刺と比較すると その大きさが分かります。

「津ぎょうざ」は通常のぎょうざ5~6個分に相当し、名刺と比較すると その大きさが分かります。

「津ぎょうざ」のキャラクター「つつみん」。市民からの応募によって命名された名前には、 「津の市民」と「包む」の意味が掛けあわされています。<画像提供:津ぎょうざ協会>

「津ぎょうざ」のキャラクター「つつみん」。市民からの応募によって命名された名前には、 「津の市民」と「包む」の意味が掛けあわされています。<画像提供:津ぎょうざ協会>

バリッとした皮と ジューシーな具
あふれる肉汁を楽しんで

「津ぎょうざ協会」の方に、作っているところを見せていただきました。「津ぎょうざ」の定義は①直径15cmの皮を使っていること ②揚げぎょうざであることで、この2点をおさえていれば、具は自由なのだそうです。こちらでは、玉ねぎ、ニラ、豚ひき肉を使っています。揚げあがりの具のジューシーさを重視しており、豚肉も部位にこだわって配合し、あえてキャベツや白菜等の葉野菜を使いません。また、何もつけずに食べられるよう、具にはしっかりと味付けをします。こちらの具を、手で大きな皮に一つずつ包んでいきます。「あまりに大きくて、包むのを機械化するのは無理なんですよ」
包んだものを150~160℃の油で、15分ほどかけて揚げていきます。低温でゆっくり揚げることによって、皮が熟成されて旨みが出て、また、中の具が蒸されてジューシーになるのだそうです。「すごく油を使う料理なんですよ。油が良くないと、美味しく揚がらなくて・・・(笑)」と会長さん。こんがりキツネ色に揚がったぎょうざを一口頬張れば、少し厚めのバリッとした皮の中から、熱々の肉汁と共に具が顔を出します。具は肉々しく、ぎょうざの具というよりは、肉まんの具のようで、玉ねぎの甘みと食感がアクセントになっています。
津の大きな大きな揚げぎょうざの中には、その美味しさと共に、地域を愛する市民の思いが沢山詰まっていました。

一つ一つ、熟練の技で包んでいきます。揚げたときに中に油がはいらないよう、しっかりと皮同士を密着させます。

一つ一つ、熟練の技で包んでいきます。揚げたときに中に油がはいらないよう、しっかりと皮同士を密着させます。

低温の油でじっくりと揚げていきます。トングでつかんだ時のぎょうざの振動で揚げあがりのタイミングを計るのだそうです。

低温の油でじっくりと揚げていきます。トングでつかんだ時のぎょうざの振動で揚げあがりのタイミングを計るのだそうです。

揚げあがりを1つ食べれば、満腹になるボリュームです。

揚げあがりを1つ食べれば、満腹になるボリュームです。

(13.10.22)

問合せは
津ぎょうざ協会 電話059-228-9029
https://info13117.wixsite.com/tsugyouza
価格
1個300~400円程度