発見!ご当地「油」紀行
第20回 宮城県 しそ巻
伊達62万石に根付いた地元食材を使った郷土の味覚
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伊達62万石の居城、青葉城跡に立つ伊達政宗像。騎上から仙台市街を見守っています。
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仙台市街で随一のケヤキ並木といわれる定禅寺通り。冬は盛大にイルミネーションが施され、ファンタスティックな光景に多くの人が酔いしれます。
青葉茂り、杜の都と謳われる宮城県仙台市。慶長5年(1600)に伊達政宗が青葉山に城を構えたことに始まり、明治までのおよそ270年間、伊達62万石の城下町として栄えました。
東は太平洋に開け、西は奥羽山脈が連なる仙台。陸中海岸は多くの良港をもち、阿武隈川と北上川は肥沃な仙台平野を育みました。山、海、平野の幸に恵まれていたため、仙台では手の込んだ郷土料理があまり発達しなかったといわれます。
しかし家庭の味として餅料理や、魚介に味噌や納豆などを上手に組み合わせた伝統の味が伝わっています。ことに “仙台味噌”は全国に知られる赤味噌で、かつては伊達藩が他藩に自慢した味でした。この仙台味噌と県下の産物を使った郷土の味“しそ巻”を紹介します。
数百年ともいわれる“しそ巻”の歴史宮城県の認証食品にもなっています
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物産館の一角に置かれたしそ巻
しそ巻とは砂糖を加え甘辛くした仙台味噌を、青しそ(大葉)の葉で巻き、油で揚げた惣菜のこと。口に運べばパリッと揚がった青しその歯触りと香味、そして口中に甘く豊かな味噌の味が広がります。
現在宮城県では“認証食品”という制度を設けて、県内で生産された主原料を使い、地域文化や技術のこだわりをもって作られた特産品を認証しています。
宮城県認証食品に選ばれたしそ巻きのメーカーを訪ねました。
「しそ巻はもう何百年も昔からの食べものだと思いますよ」とメーカーの社長。仙台は伊達藩のころから仙台味噌が自慢。各家庭でも味噌を作っていました。「家で作った味噌にゴマやクルミを入れて大葉で巻き、油で揚げてご飯のおかずにしていたんです。」 しそ巻は一説には伊達政宗が作らせたのが始まりとか。また、山間にある鳴子温泉の湯治客のために作ったのだという説もあるそうです。
「子どものころから食べていましたがただしょっぱいだけで、おいしいという記憶がありませんでした。」
そこで仙台味噌に砂糖を加え甘味噌に仕立てたしそ巻を考案したといいます。
大豆100%使用の仙台味噌と仙台近郊の小牛田や古川、加美町などの契約農家の青しそを使用。味噌の中に色麻(しかま)町のえごまや、三本木のひまわりの種を混ぜ、宮城県産の味噌と青しそを使った郷土の味が誕生しました。
青しそで味噌を巻くのも揚げるのもすべて手作業で丁寧に
しそ巻の製造所は仙台市の北、およそ40kmの大崎市郊外にあります。
市販サイズよりふた回りも大きい青しそで味噌を巻きます。味噌は親指の先ほどの大きさ。トコロテンを押し出す機械を利用したという機械からしそ巻1個分の味噌が押し出されてきます。それを一つひとつ手巻きしていきます。「青しそは大きさも厚さも違う。味噌を巻いた後少し潰して整形するのですが、この微妙な感触は手巻きじゃないとむずかしい」と社長。作業する皆さんは大変なベテラン。1人で1日に1000本も巻くそうです。
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しそ巻に使うのは普通のサイズよりふた回りほど大きい青しその葉。
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押し出されてきた味噌をベテランの技で巻いていきます。
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測ったようにサイズも同じに巻かれた製品。3本を楊枝で留めひと串にしてあります。
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状態を見極めながら手揚げで揚げていきます。
その日巻いたしそ巻はすぐ揚げるのがこだわり。揚げるのにフライヤーを使いません。「しその葉は採れる季節によっても栽培農家さんによっても、葉の厚さやみずみずしさが違うんですね。それで様子を見ながら大鍋で手揚げするんです」と社長の奥様。揚げる量は1日およそ5000本。「油に酔ったりしないですかとよく聞かれますが、これが大丈夫。油がいいんですかねぇ(笑)」
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しっかりと油をきって出来上がり。ご飯のおかず、おやつ、酒の肴にぴったりです。
こうして揚げられたしそ巻は10時間ほどかけてしっかりと油が切られます。青しその色を失うことなく、パリリとした食感。揚げる技術が感じられます。 幾百年前からのみやぎの味が、時代の要請に応えながら継承されていきます。創意と工夫とこだわりと…おいしいしそ巻の秘訣が伺えました。
(11.12.13)
- 問合せは
- 仙台観光コンベンション協会
電話 022-268-6251
https://www.sentia-sendai.jp/conventionnavi/ - 価格
- 1パック(5串15本入) 630円前後
- 仙台市へのACCESS
- 電車:JR東北本線・東北新幹線・仙山線・仙北線仙台駅下車