発見!ご当地「油」紀行
第17回 鳥取県(琴浦町)コロッケ&あごカツ
コロッケといってもポテトじゃない
鳥取東伯地方の“当たり前”とは!?

漁協直売所、レストラン、情報コーナーなどをもつ道の駅ポート赤碕。東側に日韓友好交流公園「風の丘」や農産物直売所「あぐりポート琴浦」があります。

江戸時代からの港、菊港の突堤先端に据えられた波しぐれ三度笠。彫刻家・流政之氏の作品で、平成7年度鳥取県景観大賞を受賞しました。
南に伯耆(ほうき)富士と呼ばれる名峰大山(だいせん)を望み、北は日本海の波打ち寄せる海岸に沿って広がる鳥取県東伯郡琴浦町。山側は後醍醐天皇ゆかりの船上山、日本の滝百選の大山滝が景観を誇り、一方海側は観光拠点である道の駅ポート赤碕、石像彫刻の波しぐれ三度笠、八橋(やばせ)海岸に立つ小泉八雲・セツ夫妻の来訪記念碑など新旧の見どころが広がります。
この海辺に近い一帯で町の人が日常的に親しんでいる郷土の味があります。それが“コロッケ”。なぁ~んだ、コロッケか。といってもただのコロッケではありません。ポテトコロッケではないのです。さて、いったいどのような郷土食なのでしょうか。
おやつにもお惣菜にもぴったり
戦後から始まった栄養価の高いコロッケ

琴浦のソウルフードといえるコロッケ。魚はスケトウダラを使っています。
琴浦でコロッケというとポテトコロッケは出てきません。
魚のすり身にパン粉をつけて揚げた蒲鉾のフライが出てくるのです。
琴浦一帯の海岸は遠浅で岩礁が多く、すぐ沖を暖流が流れます。こうした好漁場を持ち、県下でも有数の水揚げ高を誇る漁港が赤碕港です。中でもアゴ(トビウオ)は当地の名産でもあり、琴浦町の町の魚に指定されているほどです。
こうした恵まれた環境のもと、琴浦では新鮮な魚を使い昔ながらの技を生かしながら蒲鉾や竹輪が作られてきました。
蒲鉾にする魚のすり身を小判型に成型。それにパン粉をつけて揚げてみた…。コロッケが誕生するのにごく自然な発想だったと思われます。
「いつごろ始まったという文献がないんですよ。おそらく戦後間もない頃でなかったでしょうか」と語るのは蒲鉾店の専務。魚はスケトウダラを使い、それぞれの店がタマネギやニンジンなどの野菜を加え店独自の味を工夫してきたそうです。しかしどの店も味のアクセントに一味唐辛子を加えています。「30年くらい前までは町内の商店にコロッケが並んでいて、おやつ代わりに買ったものでした」とのことです。
このように日常的に食べられていたから“魚のすり身のパン粉付けの揚げ物”を端的に“コロッケ”と呼ぶようになったのだと考えられます。そして琴浦の町の人にとっては、ポテトコロッケより魚のすり身コロッケの方が身近でもあったのです。
食べ方はフライのようにとんかつソースやマヨネーズをかけたり、トマトケチャップをつけるなどいろいろ。おやつにはそのままかぶりついていただきます。近年はカレー味、キムチ味などバリエーションも開発されていますが、一番人気はやはり昔ながらのコロッケなのだそうです。
コロッケとあごカツ
琴浦のグルメストリートを支える旨いもの

小判形に成型したコロッケ生地にパン粉をつけて冷凍しておきます。
琴浦町の海岸線の赤碕~八橋~浦安を走る国道9号線。この国道沿いには数多くの店舗が軒を連ねています。
そこで地元事業所の有志が立案してこの街道筋を「琴浦グルメストリート」と名付けました。
琴浦グルメストリートにはレストラン・菓子舗・ショップ・コンビニ・ホテルなど50を超える店が参画しています。
琴浦グルメストリートの仕掛け人の一人でもある蒲鉾店で、コロッケの製造現場を見せていただきました。

180度の油で5分。じっくりと揚げます。

油が切れたら熱いうちにお客様へ。
現在鮮魚を仕入れてさばいてすり身にすることはほとんどなく、冷凍のすり身を仕入れるといいます。40年ほど前から冷凍技術が発達し、このほうが鮮度もよいとのこと。すり身は小判形に成型し、パン粉をつけます。この状態で冷凍しておき、お客からの注文に応じて揚げて、熱々の揚げ立てを提供するのだそうです。
フライヤーの油の温度は180度。高温の油で5分ほどかけて揚げます。両面がキツネ色にこんがりと揚がれば完成 。衣はサクッと、中身はプルンと弾力のあるコロッケのできあがりです。お客は店舗の一角に用意されているお茶をいただきながらコロッケが揚がるのを待っています。

こちらはあごカツ。アゴ(トビウオ)のすり身を使った町おこし商品の一つです。
2010年、この琴浦グルメストリートを支える人気商品が新たに誕生しました。それが“あごカツ”です。
赤碕港で水揚げされた新鮮なアゴをそのまますり潰し、パン粉をつけて揚げたカツ。プリプリしたアゴのすり身とサクサクした衣がマッチしています。
コロッケのすっきりした淡白な味に対し、アゴカツはしっかりとした旨味があります。

パックされた商品もあり地方発送もできます。食べる時はオーブントースターなどで4分ほど温めます。
これにカレーをコラボした琴浦あごカツカレーは2010年3月に鳥取市で開催された「B級+お宝グルメフェスティバル」で見事グランプリを射止めました。
琴浦町の郷土食コロッケは時代とともにますます変貌をとげていきそうです。
(11.7.19)
- 問合せは
- 琴浦町観光協会(琴浦町役場商工観光課内)電話0858-55-7811
http://www.kotoura-kankou.com/ - 価格
- コロッケ100~136円 あごカツ200円ぐらい
- 琴浦町へのACCESS
- 電車:JR山陰本線赤碕駅・八橋駅・浦安駅下車
車:米子自動車道米子ICから名和・淀江道路に入り、名和ICで降りて国道9号(山陰道)で約17km