発見!ご当地「油」紀行

第15回 北海道(根室市)エスカロップ

カレーやハンバーグと肩を並べる根室では定番の洋食

根室で撮れる花咲ガニ。JR 根室駅前にはカニを売る店が並びます。

根室で撮れる花咲ガニ。JR 根室駅前にはカニを売る店が並びます。

北方領土の祖国復帰を願って作られた四島のかけ橋。平和の塔からは四島を間近に見ることができます。

北方領土の祖国復帰を願って作られた四島のかけ橋。平和の塔からは四島を間近に見ることができます。

北海道本島の最東端にある根室は、日本で最も北方領土に近く、オホーツク海と太平洋の境目に接し、豊富なプランクトンに恵まれ栄養に富む親潮と、暖流の宗谷海流がぶつかる海をもつことから古くから漁業が盛んな街です。昆布や花咲ガニ、サンマ、サケ、ウニ、毛ガニ、タラなど、季節に応じた旬の魚介類を堪能できます。

根室市観光協会のホームページにはエスカロップが食べられる店を掲載した「根室エスカロップマップ」があります。

根室市観光協会のホームページにはエスカロップが食べられる店を掲載した「根室エスカロップマップ」があります。

しかし根室やその周辺の地域には、魚介類にも負けないご当地グルメがあります。
その名は「エスカロップ」。今や数多くのレストランで食べられるほど根室では定番の料理で、根室の人が他の地域に出かけた際、メニューが無いことに驚くほどだそうです。
今回はそんなエスカロップのルーツを探ってみました。

半世紀の歳月を経て、イタリア料理が根室で独自の進化を遂げました。

茶を基調とし落ち着いた雰囲気の店内

茶を基調とし落ち着いた雰囲気の店内

取材に訪れたのは根室の駅前通りにある喫茶店。 そのご主人によると、エスカロップの歴史は古く、根室に登場したのは昭和30年代だそうです。
エスカロップは、バターライスの上にポークカツをのせ、デミグラスソースをかけたもの。当時、根室の喫茶店オーナーが、地元のグルメをうならせるおいしいメニューを作ろうと、 各地を食べ歩き、研究をしたそうです。 その後、取引のあった横浜の食器店の紹介で、横浜で働いていたイタリア料理人を根室に呼び寄せ、提供し始めたのがきっかけだそうです。

ボリューム満点ながらも以外にもあっさりとしたエスカロップ

ボリューム満点ながらも以外にもあっさりとしたエスカロップ

「エスカロップ」という言葉はフランス語やイタリア語で「薄い切り身」の意味。それを使う料理ということからその名が付けられました。登場当初は、ソテーした仔牛肉を使っていたそうです。ご飯はケチャップ味の「エスカロップ」とバターライスの「ホワイトエスカロップ」があったといいますが、人気のバターライスが残り、それがエスカロップと言われるようになったようです。 「手に入りにくい仔牛肉を使ったソテーの代わりに、豚肉のフライを使うようになった。バターライスにはマッシュルームやタマネギを入れていたけれど、マッシュルームの代わりに食感のよいタケノコを入れるようになった」とご主人。
エスカロップは根室で独自の進化をして、現在に至ります。

根室には、エスカロップの他にもスタミナライスやオリエンタルライスなど、ワンプレートで提供される料理があります。スタミナライスは、白いご飯の上にトンカツをのせ、さらにその上に野菜炒めと目玉焼きや生卵をのせたもの。オリエンタルライスはドライカレーの上に牛肉をのせ、デミグラスソースをかけたものです。 エスカロップをきっかけにこうしたワンプレートメニューが生まれたのは、お皿1枚で食事を済ませようとする忙しい漁師町ならではのことかもしれません。

薄めの豚のロース肉を揚げデミグラスソースとバターライスに合わせる

何日もかけて作られたデミグラスソース。

何日もかけて作られたデミグラスソース。

エスカロップの作り方について、ご主人に伺いました。
一番時間がかかるのは、デミグラスソースを作ること。この店ではまずフォンドボーを4~5日かけて作り、それから小麦粉やバターなどを加えてデミグラスソースを仕込みます。家庭で作る場合は大変手間暇がかかるので、市販のフォンドボーや、デミグラスソースを使ってもいいそうです。

揚げる直前にパン粉をつけることでサクサクになります。

揚げる直前にパン粉をつけることでサクサクになります。

ご飯はバターやデミグラスソースに合わせた際にベタっとしないように、やや硬めに炊くのがコツです。また、ポークカツで使うのは豚のロース肉。厚さは5mm程度とトンカツにしては薄い方です。筋切りをしたロース肉に、塩・コショウで軽く味付けをしたら、小麦粉・卵・パン粉を付けます。

タケノコとご飯にバターをなじませ素早く炒めます。

タケノコとご飯にバターをなじませ素早く炒めます。

これらの準備ができたら、バターライスを作り始めます。フライパンに油を引いたら、タケノコのみじん切りを入れ軽く炒め、その後ご飯を入れます。バターを加え、ご飯全体にバターがなじんだら、コショウを少し振ります。バターは焦げると味が変わってしまうので、手際よく炒めるのがコツです。

軽くきつね色になったら揚げ上がり。

軽くきつね色になったら揚げ上がり。

次にポークカツを揚げます。揚げ油はラード。180度の高めの温度で軽くきつね色になるまでポークカツを揚げます。ラードの香ばしさが風味を添えますが、家庭で作る場合はサラダ油でもいいそうです。

カツが揚がったら、食べやすい大きさに切りバターライスの上にのせます。キャベツの千切りやトマト、キュウリの付け合わせを添えたら、最後にポークカツの上にデミグラスソースをかけて完成です。

この“エスカロップ”、ご家庭でも簡単に作ることができます。揚げたてサクサクのポークカツとデミグラスソース、バターライスの味の調和は絶品。
ご当地の味を是非、ご家庭で試してみてはいかがでしょう。

レシピはこちらです。⇒ エスカロップ

(11.2.7)

問合せは
根室市観光協会(根室市観光インフォメーションセンター)電話 0153-24-3104
https://www.nemuro-kankou.com/
価格
1皿800~900円(お店により異なります)
根室市へのACCESS
電車:釧路駅からJR根室本線快速で約2時間
バス:中標津空港から根室交通「中標津空港連絡バス」で約1時間40分、根室駅前ターミナル下車