Project Story 02ニーズ協働発掘型営業プロジェクト

チームオイリオの組織力と
MCT(中鎖脂肪酸)のチカラで
新たな販路を獲得せよ

[ Introduction ]

食用油の市場は、大きく一般の家庭用、業務用に分かれる。業務用のニーズを獲得すれば、安定した商品出荷を見込め、会社の業績アップにもつながるため、日清オイリオでも力を入れている分野だ。重要なのはお客さまの意図を的確に把握し、ニーズに応える商品を開発し提案することだが、当然同業他社との競争も激しく、新規顧客獲得は容易ではない。そんな中、2016年秋に全国規模で事業を展開する大手小売企業において、日清オイリオの新たな業務用商品が採用された。営業、商品開発、生産管理の担当者に集まってもらい、新たな契約を勝ち取るまでの軌跡をたどった。

[ Project Member ]

Y.K 業務用広域営業部 2003年入社
経営学部経営学科卒業

Y.M ユーザーサポートセンター 2008年入社
食物栄養科卒業

R.Y 横浜磯子工場食品課 2012年入社
工学研究科
化学・生物工学専攻修了

Scene01新規取引先の扉を開くための
関係づくりからスタート

近年、成長の一途をたどっている外食・中食業界。特に活気づいているのが、惣菜などの中食商品市場である。高齢者・単身世帯の増加、女性の社会進出を背景とした、家庭での調理時間の短縮や個食傾向の高まりにより、中食商品の需要は今後も順調に拡大することが予想される。そして、この中食商品市場でも、商品ごとにさまざまな油が使用されている。
2016年4月、業務用広域営業部に異動してきたY.Kは、全国に店舗を展開している、ある小売企業の担当を任されることになった。「中食商品を数多く取り扱っている大手企業ということもあり、他の企業を担当せず、1社専属の営業となりました。これまで当社とは全く取引がなかったため、関係づくりからのスタートとなりました」。
幸い、先方企業は次期商品を計画するにあたり、商品ごとに部会を設け、商品の見直し・改良を進めているタイミングだった。Y.Kはまず部門全体向けのプレゼンの場を設け、日清オイリオに興味を持ってもらえるよう働きかけることから始めた。その後、各部会を紹介してもらい、そこからより具体的な商品開発に向けた提案に挑んだ。

Scene023社のコンペへ。
独自の「ストーリー」づくりで差別化

部会ごとにそれぞれの目的に沿ったプレゼンを行うため、ほぼ毎日、先方企業の事務所に張り付き、商談を重ねた。
そのうち一つの部会で、具体的な動きが耳に入ってきた。成形をしやすくするために油が使われている商品で、近々に複数の製油メーカーが参入を競うコンペが行われるという情報をつかんだのだ。「顔見知りになった部会の担当者に、秋からの商品改良に向けたコンペがあることを聞き、参加させていただけるよう、お願いしました。参加企業は当社を含め3社。現行の商品を受注している会社、他の商品ですでに先方企業と取引実績があるもう1社と競うことになりました」。
オリエンテーションで具体的なオーダーを確認すると、さっそく商品開発が始まった。コンペまでに残された時間は2カ月余りしかない。すでに取引のある2社と比較して、日清オイリオと取引することのメリットを伝えるにはどうすればいいのか? Y.Kが意識したのはストーリーづくりだった。「先方商品部とどのような商品を作り上げていくか、どのように改良していくか、といったことを話し込み、マーケット調査や消費者意識を踏まえ、あるべき商品の姿を提案することを目指しました」。
商品開発では、ユーザーサポートセンターに勤務しているY.Mが大きな役割を果たす。Y.Mは商談に同行、先方の担当者から聞いた話をもとに、油種などの配合を検討した。「最も説得性のあるデータを得るため、可能性として考えられることをいくつも試し、検討しました。また、先方企業の実情(設備や現行油配合など)がわからないため、商談の会話の中から、情報をできるだけ多く聞き出し、予測を立てながら解決策を探していきました」(Y.M談)。

Scene03MCTの機能をアピール、見事採用へ

先方企業からの条件は、油の使用感を意識させないこと。「この条件を満たした上で、当社の商品を採用してもらうにはどうすればいいのか議論を重ねた。その中で着目したのがMCT(中鎖脂肪酸)だ。ココナッツやパームフルーツに含まれる天然成分で、一般的な油よりもすばやく消化・吸収され、すぐにエネルギーになりやすいという特長がある。「当社の得意分野は何かと考え、思い浮かんだのが健康=MCTです。そこで新商品にMCTを使用しようと決め、油種などの配合を工夫しました」(Y.M談)。開発と並行して、味覚センサーの活用や物性データの取得、官能評価などを通じて、データの“見える化”にも取り組んだ。
とはいえ、商品開発はとんとん拍子には進まない。Y.Kが打ち合わせで部会を訪ねるたびに、「油感が出過ぎる」「素材の味が消えてしまうのでは」といった課題が突きつけられる。その意見を持ち帰って共有し、配合などの見直しを繰り返す日々が続いた。
一方、工場ではラインの確保が必要だった。「受注できれば、すぐに大量の商品を製造することになります。そのため、開発サイドが望むスペック(資材仕様、油配合など)を満たすような製造設備の構築が必須でした。製造量や納期も意識し、『大丈夫。対応できる』と確信。開発サイドに伝えるとともに、いつ発注が来てもすぐに対応できるようなイメージを心がけました」と生産を担当した横浜磯子工場に勤務しているR.Yはふりかえる。
2カ月にわたる試行錯誤の結果、MCTの機能を活かし、素材の味を上手く引き出せる油を開発。コンペでは、Y.Kはデータを添えて新商品の特徴を強く打ち出し、商品の品質向上のためになぜ当社の油脂製品が必要なのかを伝えることを心がけた。

Scene04“チームオイリオ”の組織力で、
さらなる取引拡大を目指す

9月、先方企業から『採用』の連絡が届いた。「もちろん嬉しさはありましたが、これからが本番と気を引き締めました」とY.Kは語る。11月から納品が始まるため、すぐに製造体制を整えるための社内調整が始まった。現場サイドのR.Yは、納期を意識し、全体の到達点から逆算して、何を、いつまでに、どうする必要があるか考え、製造体制の構築に取りかかった。「発売時期が迫っているため、わずかな遅れも出せないというプレッシャーは大きかったですが、周囲の協力もあり、実生産までスムーズに進みました」(R.Y談)。
こうして11月、日清オイリオの油を使用した商品が全国で発売され、幅広い年齢層のお客さまが商品を手にすることになった。「先方の担当者から、『おいしくなった』『前と全然変わった』などの声がお客さまから届いていると聞かされ、当社の油の魅力が伝わったことを実感しました。すぐに社内の関係者に伝え、喜びを分かち合いました」とY.Kは語る。横浜磯子工場の食堂にも日清オイリオの油を使用した商品のポスターが貼られた。「自分が立ち上げに携わった商品が多くのお客さまの手に渡っていると思うと感慨深かったですね」(R.Y談)。
今回のプロジェクトの勝因について、Y.Kは“チームオイリオ”の組織力を挙げる。「先方から求められるレベルは高く、マーケットの動向や消費者意識など、全方向から検討が必要でしたが、製造現場から技術開発、事業本部、営業部門に至るまで、担当者も上長も一丸となって商品提案に取り組みました。各部門間で密に情報を共有する風通しの良さ、困難な問題をチームで解決する組織力が、当社の一番の強みだと思います」。
その後、Y.Kは同企業の他の商品でも新たな受注を獲得。商品の品質向上につなげるとともに、さらなる取引拡大を目指して営業努力を続けている。顧客のニーズを発掘し、商品を提案する“チームオイリオ”のチャレンジに終わりはない。