Project Story 01『鮮度のオイル』シリーズ販促プロジェクト

“かけて食べる”
新たな油の使い方を提案する!

[ Introduction ]

「おいしい魔法かけてこー!」のテレビCMでおなじみの『鮮度のオイル』シリーズ。健康性に優れたオイルを食卓でかけて使う、新しい食習慣を提案する商品だ。2015年春の『日清アマニ油』に始まり、2016年春に『BOSCO エキストラバージンオリーブオイル』、2016年秋に『日清かけて香る純正ごま油』とラインアップを拡充してきた。2018年春には、『日清マカダミアナッツオイル』を新発売。ボトルも使い勝手と品質を保持する力をさらに高めた新型フレッシュキープボトルに刷新した。『鮮度のオイル』シリーズの開発・販売促進はどう進められたのか。事業戦略を立案し、推進してきた担当者に、開発の裏側を聞いた。

[ Project Member ]

K.Y 商品戦略部ホームユース課 2003年入社
農学生命科学研究科
生産・環境生物学専攻修了

Scene01“油のメリット”を活かした商品を、
お客さまに届けたい

『鮮度のオイル』シリーズは卓上使いで、オイルの新鮮な風味を楽しみたい方に最適なオイルとして提案しています。“酸化ブロック製法”と“フレッシュキープボトル”を採用することで開封前も開封後も酸素に触れにくく、詰めたてのおいしさが続くことから、多くの方々に好評をいただいています。
私は2014年3月に商品戦略部ホームユース課に異動してきましたが、以前の中央研究所時代からアマニ油を担当していました。それまでは、食用油というと「おいしいけどカロリーが高い」とか、「体脂肪が増える」といったマイナス面ばかりがフォーカスされ、家庭での使用量も伸び悩んでいました。当社の商品群でも、「脂肪がつきにくい」「コレステロール0」など、マイナス面を払拭する商品がほとんど。しかし、油には、体に必要なエネルギーを効率よく供給する中鎖脂肪酸や、悪玉コレステロールを減らすオレイン酸、血液の流れをよくするビタミンEなど、健康な体づくりに欠かせない栄養素を含んだものが多くあります。特に、必須脂肪酸であるα-リノレン酸(オメガ3)※1が多く含まれ、生で使っていただくアマニ油は、開封後の劣化を防ぐ工夫さえできれば市場が広がると確信していました。
この課題を解決したのが鮮度のオイルシリーズです。意識したのは、「生活の中にどう取り入れてもらうか」ということ。サプリメントに頼るのではなく、健康のために毎日生でオイルを摂ることを習慣化してもらうには、卓上で手軽に使えるようにするとともに、使い方も併せて提案することが必要だと考えました。資材開発・購買課とともに、容器開発などの検討を始めたのは2013年頃から。既に醤油の容器として利用されていたデラミボトル構造※2が、鮮度の維持にも効果があると研究所で実証済みだったことから、新商品に導入する取り組みが始まりました。容器のサイズは、卓上使いで1日あたり小さじ1杯を摂ってもらうことを想定し、1カ月分=約145gに設定。また容器の外箱やHP上でレシピを紹介し、いろいろな使い方を試してもらえるよう工夫しました。

  • ※1:α-リノレン酸(オメガ3)
    植物油の主成分である脂肪酸の1つ。体内ではつくることができず、食品から摂らなければならないため、「必須脂肪酸」と呼ばれている。血中の中性脂肪を下げる作用、血栓ができるのを防止する作用、高血圧を予防する作用があると言われている。また、α-リノレン酸を原料にして、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が体内でつくられている。
  • ※2:デラミボトル構造
    ボトル本体が二重構造になっており、注いだ分だけ内容物を含む内袋が小さくなる。逆止弁キャップにより空気が入ってこないため、開封後も酸化しづらい。

Scene02初めての挑戦が続き、試行錯誤の毎日

こうしてボトルのサイズ・形はある程度決まったものの、どこで、どのようにしてアマニ油を容器に充填するかを決めるという課題が残っていました。当社にとって初めて導入する容器だったため、資材開発・購買課に依頼し、ボトルの搬送や充填、キャッピングなど、各工程において、どのような問題が出そうかという調査を行い、課題を整理してから必要な設備を決めていきました。
並行して宣伝・広告課と相談し、コミュニケーションプランの企画を進めました。

  • プラン①

    従来食用油ユーザー(40代以上)には新しい使い方を提案する
  • プラン②

    食用油未経験者層(30代以下)を新たなカスタマーとして誘導し、消費を喚起する

目標に掲げたのは以上の2点。作業はまずコミュニケーションをしかける側=私たちが持っている「油とはこうだ」という固定観念を柔らかくすることから始めました。「油はキッチンに収まっている」「油を使った調理は敷居が高い」「メインターゲットは40代以上」といった概念を一つひとつ検証し直し、「でも、この商品ならこういう使い方や置き方ができるよね」と、さまざまな会話を重ね、可能性を試していきました。
「今回のプロジェクトを通じて、食用油を扱っている私たち自身が枠を勝手に作ってしまっている部分があったことに気づかされました」(宣伝・広告課担当者談)。
テレビCMでは、プラン②のターゲットである若い世代に対しても訴求力が強い二宮和也さんを起用。「おいしい魔法かけてこー!」のコピーとともに、楽しそうにさまざまな料理にオイルをかけていくシーンを描き、親しみやすさや健康感を前面に出して商品をアピールする方針が決まりました。十分に勝算はあると思っていましたが、販売開始までは社会に受け入れられるか不安でしたね。

Scene03健康ブームを追い風に、市場が10倍に拡大

2015年春、『鮮度のオイル』シリーズ第一弾として『日清アマニ油』を発売しました。2月下旬にテレビ番組で取り上げられたこともあり、発売当初から我々が想定していた以上の売れ行きに。ちょうど社会的にも健康に関する関心が強まり、テレビや雑誌でも頻繁に特集が組まれていた時期で、発売時期も良かったのでしょうね。店頭の在庫がなくなり、休売せざるをえず、慌てて製造ラインを見直しました。当時は低速の半自動ラインでしたが、現在では高速充填ラインで生産しています。
発売後に予想外の発見もありました。その後に発売するオリーブオイルやゴマ油と違い、アマニ油は味の主張がなく、魅力が伝わらないのではないかと危惧していたのですが、消費者アンケートを見ると、味噌汁や納豆など、和食にかけて使ってくださる方が多かったのです。アマニ油のマーケットは約10倍に広がり、スーパーマーケットなどでも目立つ場所に陳列されるようになりました。アマニ油が味に主張がないことがいい方向に作用し、市場が広がったことを実感しています。
また『鮮度のオイル』シリーズでは、当社が今まで試みたことのないキャラクターボトル戦略やポップアップストアの開設などの販促活動にも取り組みました。商品に親しみを持ってもらったり、実際に使ってもらったりすることで商品の魅力を実体験してもらうことが重要だと考えたからです。2017年の期間限定で販売したスヌーピーボトルは、SNSなどで拡散され、大きな反響を呼びました。また、2017年秋に表参道に設置したポップアップストアは連日満員の大盛況。2週間でトータル8000人のお客さまが来場してくださいました。試食体験では、お客さまが「おいしい魔法かけてこー!」のフレーズを口ずさみながら、楽しそうに料理にかけてくださっていたのが印象的でした。

Scene04食シーンの新たな可能性を求め、
さらなる挑戦へ

「油は調理をするために使うもの」から「健康のために品質のよいオイルを積極的に摂取したい」へ。ここ数年の健康ブームにも乗り、一般の方々のマインドは大きく変化しています。『鮮度のオイル』シリーズでは、お客さまのニーズとうまく合致し、その動きを加速・定着させることができたのではないかと考えています。また5年、10年前ならほぼ存在しなかった「油をかけて食べる」というマーケットを開拓できたことは、食品メーカーとしても大きなチャンスだと思います。
2017年春にはシリーズ4品目の『マカダミアナッツオイル』を発売。それに合わせてフレッシュキープボトルを刷新しました。従来は汎用品を使用していましたが、オリジナルボトルを開発し、使い勝手を向上させると共に、遮光性の高い乳白色のラベルを使用。今まで以上に品質を保持する力を高め、商品力アップに努めています。
「乳白色のラベルには遮光効果があり保存性が良くなることは確認していましたが、残量がわからないことから、今まで導入できていませんでした。資材メーカーに新たな機械を作っていただき、新ボトルと組み合わせることで業界初の窓付き乳白ラベルを導入することができました」(資材開発・購買課担当者談)。
資材開発・購買課や宣伝・広告課など多くのメンバーの協力により、プロジェクトを成功させられたことを大変嬉しく思っています。また今回のプロジェクトを通して、食のシーンには、まだまだいろいろな可能性があることを再認識しました。これからも日清オイリオだからこその商品開発力・企画力を駆使して、多くの方々を笑顔にできる商品を届けていきたいと思っています。